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『私の家に、新しい家族が来ました』6




ギャグとはなんだったのか(笑)
とりあえず、瑠姫の父方の叔父に関してはとにかく嫌なやつにしようと
試行錯誤した結果がこれです←




一気に物語は進んでいきます。
と言うかこのままだと気分悪いので、更新は近々しますよ。


 過去と言うものは、ふとした事で思い出すもの。
 しかも、嫌な思い出は尚更思い出しやすい。思い出したくなくても。だ。
 トラウマと言うものはなかなか消える事はない。消えたらこんなに苦労はしない。
 それが自分の事であっても、他人の事であっても。





    それが、自分を守るためのエゴのためにやった事でもあっても……。





 瑠姫が子猫を拾ってからは、時が経つのはあっと言う間だった。
 瑠姫達は、子猫を仕事の暇を見つければ可愛がっていた。
 最初は、子猫の世話に関して焦る事や困る事も多々あったが
 彼らは彼らで、出来る範囲にと子猫の世話を一生懸命していた。
 それに答えるかのように、子猫達はあっと言う間に瑠姫達に懐いて行き
 たまに悪戯はするものの、基本は人懐っこい元気な子へと短い間であっという間に成長していた。
 だが、その反面瑠姫達の里親探しは、難航を示していた。
 なかなか、里親が現れないのだ。募集はかけているが会いに来るのはミーハーな連中。
 中には猫を見ず、慎や煉斗の方ばかりを見ている人もいた。
 (当然、そんな人に関しては冬摩は容赦なく却下の態度を見せたのだが。)
 それもそうである。聖達にバレないように行動しているが故に
 里親募集の行動範囲が、狭まれているのが主な原因と言える。
 店の前に貼ろうも、連絡先はどうするかと言う意味で却下。
 ポスターを貼ろうにも、近所に貼ると連絡先な意味でバレるから却下。
 だったら連絡先はフリーメールとかでも、とは思ったのだが
 それを思いついたのは、すでに聖達が戻る前日。間に合わないと言う理由で却下。
 結果、遠くの町に貼るか煉斗や冬摩が大学構内で募集する。と言う判断に陥ったのだ。




 遠くの町。と言う事で、あれから遊びに来た時兎にも『姐さん達には絶対内緒で!』と念を何度も押して
 協力はしてもらっているが、結果は結局無に等しかった。
 タイムリミットはあと数時間。時計を見ながらも、彼らは腕を組み考え込んでいた。
 一番有力な候補は、煉斗の同級生が
 『うちのクラブで、里親を探しつつその間はクラブで面倒を見る。』と言う手だった。
 その条件は嬉しかったが、申し出たクラブはメンバーが少なく
 家に連れて帰る事の出来る人間がなかなかいない。と言う事で
 最悪の場合、一人に大きな負担がかかる。と言う事でなかなか踏み込めなかったのだ。
 だが、慎の「一時的自分達が預かるなら多分大丈夫だろうから、
 それで何となるのではないか。」と言う言葉に
 決断を渋っていた瑠姫も納得し、最終的に見つからなかったらそうしよう。と言う事になったのだ。
 そしてタイムリミットが迫り、準備の事を考えると最終手段を踏み切ざるを終えなくなっていた。
 「……結局、里親探しは一応延びるってわけか。」
 残念だなぁ。と呟きながらも、慎はため息をついた。
 その場にいる皆も同じ気持ちらしい、反論の声を出す者はいなかった。
 子猫に愛着を一番持っている瑠姫に関しては、唇を噛みながらも小さく頷く。
 「まぁ、一生会えないってわけじゃないんだからさ。
  里親が見つからない間は、たまに会えるんだし。
  見つかっても写真が欲しいってねだれば大丈夫なわけだし、な?」
 煉斗の励ましの言葉をかけるも、瑠姫の表情が変わる事はない。
 それもそうだろう、子猫は一番瑠姫に懐いているのだ。
 たまに家に戻り、掃除しに行ったりする時も瑠姫は子猫を連れて行っていた。
 「この子一人にはさせません。」等と、色々理由をつけながらもだ。
 最初は渋っていた冬摩だったが、次第にその気も薄れていき見送っていた。
 それだけ、愛着が沸いてしまったと言う事だ。
 子猫の里親探しのパターンでは一番難解なパターンである。
 だか、それを否定できる者はいなかった。皆、愛着を少なからず抱いていたからだ。
 それを分かっているからこそ、誰も瑠姫に厳しい言葉をかけない。かけられない。
 冬摩でさえ、無言を貫いている。普段なら厳しい声をかける冬摩でさえ。
 こんな時に、瑠姫をからかいながらも慰めるであろう時兎も、今はいない。
 今日は遅くなるが、タイムリミットまでには来る。とは言っていたのだが……。
 ここに来て空気を読まないか。と冬摩は若干苛立ちも感じていた。
 それでも、口に出す事は絶対にしなかったが。
 そんな中でも、子猫は瑠姫の胸の中で静かに寝息を立てている。
 呑気なものだ。と冬摩は心の隅で思いつつ子猫をただじっと見つめていた。
 沈黙が空間を染める中、それをまず先に破ったのは慎だった。
 「とりあえず、連絡もしなきゃいけないからそろそろ用意しようよ。
  姐さん達が戻る前に、子猫を渡さなきゃ。掃除もしないと。」
 悲しさを誤魔化すかのように言う慎に対し、煉斗も静かに立ち上がって言う。
 「……そうだな。あいつら『いつでも待ってる。』って言ってたけど、
  あんま待たせても駄目だしな。『駄目だったら駄目でいい。』とも言ってたけど。」
 「……あぁ、じゃあ俺は子猫を運ぶケージを用意するか。」
 冬摩も、釣られるように席から立ち上がる。その立ち上がる動作も
 何処か遠慮がちだ。やはり決心がつかないのだろう。
 そして、瑠姫は座ったままだ。そんな妹の様子に慎はため息をつく。
 「瑠姫。早くしないと姐さん帰ってくるよ。気持ちは分かるけど……。」
 ほら。と言うように瑠姫の後ろに立ち、そっと肩を叩く。
 そして、掠れるような声で瑠姫は言った。
 「……ま、待って。」
 その弱弱しい言葉に、男達は一斉に瑠姫を見る。
 見ると、瑠姫の肩は震えていた。決心したとは言え、やはり彼女も迷っているのだろう。
 誰かが、いい加減にしろ。と言う言葉を待った。だけど、その言葉は誰も発しなかった。
 甘いと思われるかもしれないこの行動、だが彼らを咎める者はこの場にはいない。
 瑠姫自身も、その言葉を待っていたのかもしれない。だからこそ
 言葉を発した後、暫く黙ったままだった。そして、再び掠れるような声で言う。
 「まだ、ちょっとだけ。一緒にいたい……いたいです。
  一緒に散歩、してきていいですか?20分ぐらいで戻るから……。」
 それは、小さなお願いだった。
 決心を鈍らせるようなお願いに、煉斗は驚きを隠せないような表情で瑠姫を見る。
 「ちょ、それじゃあ間に合わないかもしれな……。」
 瑠姫の案に、煉斗は止めようとするがその前に冬摩が止める。
 そして時計を横目で見つつ、渋い顔で一度だけはっきりと言った。
 「……かまわんが、それが終わったら絶対に戻って来い。
  タイムリミットは一時間。それくらいなら何とかなるかもしれん。」
 小さく指を指した先にある、カチカチと音のなる部屋の時計を見る。
 「だが、里親を探すと決めたのは、お前という事を忘れるな。
  これは最後のチャンスだ。しっかり覚悟を決めて来い。……いいな。」
 振り絞って出た厳しい言葉、その言葉を放った冬摩の表情はやはり厳しいものだった。
 だが、その表情には寂しさも含まれる。誰も言わないのならせめて自分が、と思ったのだろう。
 瑠姫は、分かってます。と一度だけ頷いて席を立ち上がる。
 そしてそのままリビングのドアの方へと向かう。
 彼女が出るまで、男3人はただ黙ってその姿を見つめる事しか出来なかった……。





 「……なんで、言わなかったの?」
 瑠姫が去った部屋、煉斗は近くのソファーに深く座りながら言った。
 緊迫した空気に耐えられなかったのであろう、その顔には疲労の色が見える。
 だが、片手では約束の時間を打つメールをゆっくりと打っている。
 「何でって、どう言う意味だ。」
 「……にーちゃんなら、厳しくねーちゃんを叱ると思ったから。」
 冬摩のぶっきらぼうな問いには、煉斗は呟くように言う。
 「だね、冬摩は何だかんだ言って瑠姫には結構甘い。
  ……でも、それは僕が言える立場じゃない。と言うか、僕らが言える立場じゃないって話。」
 悲しい事にね。そう呟いて慎は入れていた麦茶を一気に飲み干す。
 「それだけ、あの子猫に愛着持ちすぎたって事だよ。
  悲しいね。決意していたのに、里親を見つけるから愛着を持ちすぎちゃいけないって。」
 「そうだね……俺も、自然とあの子猫の事好きになってたからさ。
  厳しく言えなかったよ、言えるはずなんて……。」
 だからこそ、厳しく言わなければならなかった。それはその場にいる全員が思っている事だった。
 暗い表情をしたまま、黙り込む三人。暫し黙り込むと、ふと冬摩が以前から思っていた疑問を持ちかける。
 「……そういや、時兎の事なんだが。」
 冬摩の言葉に、まず煉斗が何でそこで?と言うように冬摩を見つめる。
 その目線を受け取りつつも、冬摩は続けた。
 「あいつ、もしかしたらあの子猫に関与してるかもしれん。」
 「……え?」
 いきなりの言葉に、煉斗はぽかん。とした表情で冬摩を見る。
 もちろん、メールを打つ手を止めて、だ。
 慎はいつかは出るだろうと思っていたらしく、別に驚いた様子は見せないまま続けて。と冬摩に言う。
 「……あの子猫、時兎を知ってるみたいだったから。」




  「うわぁ、この子かわいいね!なんて名前なの?」
  「名前はまだ決めてないです。里親探すまでに名前を決めるよりも、
   その里親さんに名前を決めてもらった方がいいかなって。」
  「そうだねぇ。あ、この子俺の手舐めてる。くすぐったーい!!」
  「あ、ずるいですっ。私だってまだ手を舐めてもらった事ないのに!」
  「…へへっ、俺これでも猫に好かれやすいからねー♪」





 「初対面の時も、時兎に普通に懐いていた。
  これは、あの子猫が人懐っこいってのもあるから確信は薄いが。
  しかし、時兎自身もじゃらし方を知ってるようだった。
  あと、餌の時。『その子ならこれが好きじゃないの?』と言ってオススメした餌を一番喜んで食べていた。」




  「ほら、こーやって。ほらっ、この子やっぱこれ好きだよ!」
  「へー、凄いなぁ。時兎が始めてだよ。見つけたの。
   俺らが遊ぶ時、あんま乗り気じゃなかったからなぁ。甘えはしてきたけど。」
  「こーいう子には、やっぱり猫じゃらしのかるーく振るのが一番なんだって。」
  「成る程ね。でも僕、時兎が猫飼った事あるとは聞いてないけど……。」
  「ま、まぁ知り合いんとこで猫触らせてもらった事があるって事で…ダメ?」
  「はいはい、じゃあそういう事にしておきますよっと。」
  「うー、まこちゃん。結構冷たい……。」
 


  「あれ?この子このフードは食べないのかな。」
  「あ、違う違う!こう言う子にはこれが一番なんだって!」
  「これって、僕が買って来たのとまた違う種類だね。
   野菜多めか。まぁ離乳食だから大丈夫とは思うけど。」
  「そりゃあ、猫ちゃんだってグルメだからねー。」
  「……へぇ。」




 
 偶然かもしれないが、と付け足しつつ冬摩は説明していく。
 煉斗や慎も心辺りがあるのか、横槍を入れる事なく冬摩の話を聞いて行く。
 特に慎に関しては、会話の節々にあった不自然な部分を思い出しながら、だ。
 「あとは、子猫の里親を探す時だ。
  瑠姫は気づいていなかったが、里親探しに関しては何だかんだ言ってアイツも渋っていたからな。
  ”協会”にもらったものを、渡していいのか?とか何度も聞いていたし。
  理由を話したら、まぁ仕方ないよね。でもちゃんと子猫のぬいぐるみはお願いするんだよ。とも言っていた。
  ……俺は、ここでアイツが怪しいと思っていた。」
 冬摩が語り終え、一度小さくため息をつくと何か感づいたかのように煉斗は目を見開く。
 慎に関しては、薄々気づいてはいたらしい。再度驚いた様子は見せずに冬摩を見ている。
 「ちょ、ちょっと待ってよ。可笑しいよ。
  俺、確かに子猫は、時兎さんがクイズ関与してないからって思ってさ
  あんまり深い事情話しちゃ駄目って思ったから『向こうが間違って猫のぬいぐるみじゃなくて
  本物が送られてきた。』とは言ったけど……。」
 煉斗の頬に、つ…と冷や汗が流れる。
 嫌な予感が脳裏を過ぎる。信じたくはないがまさか、とは思った。
 気づかない姉はある意味鈍感かもしれない、だがそんな問題ではない。
 煉斗の言葉に、そうだ。と言うように冬摩は頷く。そしてはっきりと、ずっと思ってきた疑問を……述べた。






   「何でアイツ、子猫が”協会から間違えて送られてきた”と言うのを知ってるんだ?」






 瑠姫は、結婚後住んでいるマンションの近くの公園にいた。
 目の前には、砂場や遊具で遊ぶ子ども。井戸端会議を続ける親。
 そして、楽しそうに散歩している犬と飼い主。
 たまに会えるはずなのに、何故自分は一人我がままを言ってこんな事をしているのだろう。
 そう思ってはいるものの、なぜか前に踏み出せない。
 自分で、里親見つけるとは言ったものの、やはり思い出してしまうのだ。
 あの時、子猫を守れなかった無力な自分を。
 「(……煉斗君のお友達だから、任せて大丈夫って信じてます。
   一度会った事あるし、煉斗君が認めた子だから大丈夫だって事も。
   無理やりこっそり過ごすよりも、安全な所で育った方がこの子の為だって分かってる、けど……。)」
 すやすやと未だ眠ったままの子猫を優しく抱きながらも、瑠姫は思う。
 あれから、ずっとあの夢を見る。あの時無力だった子どもの頃の夢を。
 泣き叫ぶ自分、笑うあの男、何も言い返せなかった自分。
 強くなりたい、何度も願うからこそ見るあの夢。
 大丈夫、あの子達はこの子を捨てたりなんてしない。保健所に連れたりなんてしない。
 分かっている、心の奥底では分かっている。
 だから、これは自分の我侭。いつまでも子どもの我侭に付き合ってはいられないはずだ。
 もう自分は結婚して夫もいる身。そろそろ大人にならなければ。
 「(……あの時、冬摩さんが厳しい言葉をかけないでよかった。
   私、ムキになってまた喧嘩しちゃう所だった。
   それが分かってるから、冬摩さんは何も声をかけなかったんだよね……。)」
 結局は、冬摩の言葉に甘えているだけ。そう分かると何だか申し訳なくなっていた。
 ふと公園の時計を見る、時刻はもうすぐ約束の一時間に迫っている。
 このままここにいても、意味がない。
 二度と会えないわけではないのだ。たまに預かれる。それだけで満足しなくては。
 「(そうです。私はもう大人にならなければいけないんです。
   そうじゃなきゃ、この子にも申し訳がないですからねっ!)」
 覚悟を決めなければ、そう自分の心に言い聞かせて強く頷く。
 そろそろ帰ろう。冬摩達も心配しているだろう。
 そう思い、子猫を起こさぬようにゆっくりと立ち上がった時だった。
 上から降ってくる声に、瑠姫の心は一気に絶望へと陥った。





   「よぉ。久しぶりだな。」





 聞きたくない、声だった。
 時兎とは違う、何処か冷たさの混じる声。
 飄々に喋るその声に、何度嫌悪を感じたか。
 未だに嫌悪を感じるその声は、今でも聞きたくないと思う。
 ガタガタと足が震えそうになる、何故ここにいるのか。
 確か、詩織や聖に自分には近づくな。そう言われていたはずなのに。 
 否、ここは違う。ホームステイしていた場所には近づくなとは言われていたが。
 この場所は、教えていないから用心は必要だが滅多には来ない。そう思っていた。
 だが、油断した。今ここに彼がいる。それが証拠だ。
 ゆっくりと顔を上げる。本来ならあげたくもなかったけどそうは行かない。
 逃げ道はないだろう。否、逃げた方がよかったかもしれない。
 そう後悔するのは後の事で、今はそんな事を思う余裕などなかった。
 ぼさぼさの短い赤い髪、耳にはピアス。
 そして……赤と黄色の柄の混じったシャツを着て、男は立っていた。




   「な、なんで……貴方が?」





 瑠姫の言葉に、男は不機嫌そうにタバコをふかしながら話す。
 「何でって、いいじゃんよ。ここは俺が来ちゃいけないって言われてる場所じゃないし。
  あくまで、お前の職場やホームステイ先じゃねぇし。それで文句言われる筋合いねーよ。」
 わざとらしくふーっと大きく紫煙を噴き、そのままタバコを地面に落とす。
 足でぐりぐりと火を消しながらも、黄色に染まった歯をにやりと見せながら笑った。
 「なかなか瑠姫が連絡くれないからさ。来ちゃった。
  結婚式にも呼んでくれないなんて、瑠姫冷たいねぇ。オレ寂しかったぜ?
  一応、俺は瑠姫のおとーさんの弟、なんだからさ。」
 「…………。」
 瑠姫は、男に目を合わせようとしない。
 その顔は厳しい。雰囲気からして明らか歓迎している様子はない。
 男…瑠姫の叔父であるこの男は、時兎とは違って勝手な男だった。
 瑠姫に雷嫌いとなるトラウマを植え付け、父が行方不明になったのをいい事に
 何度も母に離婚を迫り、自分と再婚する事を強要した。
 ほとんど関係が薄れている今でも、油断があれば瑠姫に母との結婚の協力を迫ろうとし
 無理やり迫った事から、家族メンバーの殆どが彼に目を光らせていた。
 結婚してからは、当然住所も教えていない。だとすればなぜ。
 男も分かっているのか、瑠姫の反応を見るなり軽く舌打ちをし、瑠姫の隣に座ろうとする。
 しかし、瑠姫は彼が座る前に立ち上がって彼からの距離を狭めようとする事を拒否した。
 そう、瑠姫はこの男を結婚式には呼ばなかった。 
 結婚式の招待状を送る際に、最後まで迷った末式場等を仕切っていた詩織に相談した所
 『送る時に別にルールはないはず。好きな人を送りなさい。』と言う助言の元、だ。
 「……どうせ呼んでも、貴方は私の夫を貶すでしょう。
  こいつにするよりも、俺のようなやつにしろ。とか。」
 「ハッ、分かってんじゃん。
  でもお前が結婚する前に、俺と瑠姫のママとの結婚を認めて欲しかったねぇ。」
 その言葉を聞き、瑠姫は強く唇を噛み締める。
 もともと、母親自体もこの男と結婚する気はめっぽうない。母は父一筋だからだ。
 だからこそ、無理やりでも好感を持たせようとするこの男が嫌いだった。
 「それとは関係ないでしょう。
  何度も言いますが、私はお母さんが貴方と結婚する。と認めたら仕方なく認める…と。」
 「だからさぁ、それが無理だから瑠姫に説得しろって頼んでんじゃん。
  そっちこそ、何度言ったら分かるかねぇ……。」
 瑠姫の言葉に、またかよとうんざりするような声で男は返す。
 またか、と言いたいのはこっちの方だ。何度振られても諦めないその精神に反吐が出そうになる。
 「そこはおとーさんに似ちまったかぁ。兄貴も対外そうやって俺を叱ったからな。
  残念、ほんっと残念。昔のいい子だった瑠姫ちゃんはどこに行ったのやら。」
 ポケットから煙草を取り出し、火をつけると思いっきり吸う。
 そして、わざと声を出しながらも大げさに紫煙を吹いた。
 途中、通り過ぎたサラリーマンに当たったらしく、そちらもわざとらしく堰をする。
 その男に対しては、ケッと声をあげて反省の色なんてない。と言うような態度を取る。
 そんな態度を何度も見ているらしい、瑠姫は怒りを感じながらもあえて冷静に返す。
 「成長していないのは、貴方だけです。
  私はもう、あの時の泣き虫ではないんです。
  貴方みたいに、いつまでも母の後を追い続けるような人にはなりたくありませんしね。
  ……私に用はそれだけですか。だったら無駄でしたね。
  さっさと帰ったらどうです。私には協力できる事なんて何もありませんから。」
 滅多に言わない嫌味の言葉を口にした後、ふんっとわざとらしく鼻を鳴らす。
 利かないのは分かっている、だけど言いたくて仕方なかった。
 憎たらしいくらいに絡みたくないこの男。こうでも言わないと調子に乗るような気がして。
 普段なら、このくらいの言葉を並べた後は向こうも嫌味を言い返して帰って行くのだ。
 (冬摩などがいた場合は、口論になる前に追い払ってはくれるが)
 瑠姫も、それを若干期待しつつ向こうの言葉を待つ。



 だが、今日は何処か違った。男はくつくつと笑っているのだ。
 何が可笑しい。と言うように瑠姫は男を見る。男は笑ったまま煙草を吸った。
 そして、瑠姫にずいっと顔を近づけると男は言った。
 「いいのか?そんな余裕じみた事言ってよ。
  いつもは守ってくれる家族は、今はこっから結構離れたとこにいんだろ?
  今回は助けてくれねーぜ?それとも、一人で何とか出来ると思ったとか?」
 口から伝わる煙草と口臭に、吐き気を催しそうになる。
 瑠姫は、気持ち悪さから口を抑えようとする。だがその行為すら許そうとしない。
 瑠姫の手首をしっかり握り、男は続けた。目線は……瑠姫の胸元にあった。
 そこにいるのは、片手でしっかりと抱かれた子猫の姿……。
 「……似てんなぁ。あの時の子猫に。
  もしくは生まれ変わりとか、かもな。」
 その言葉に、瑠姫の体は自然と震え上がる。
 格段と低いトーンでつぶやくその言葉は、続きを聞きたくないと本能が拒否をする。
 だが、それを許さない。男はニヤリと笑って続けた。




  ―― ねぇ、この子かっていい?


 「懐かしいな。確か瑠姫がちっさい頃に拾った子猫もそんなんだっけな。」



  ―― この子、かわいいんだよ!!
     ごろごろのどをならして、すっごくかわいい!!




 「確かその時は、瑠姫が世話してたけど子どもだから無理があるって思ってさ。
  優しい俺が、里親見つけてやるって言ったら逆らったんだよな。」



  ―― どうしよう!!あの子がいないの!!
     きのうまでは、わたしのベッドのとなりにいたのに!!




 「だから、俺がとっておきの方法を取ったんだっけ。」



  ―― なんで、なんでそんな事したの!!
     かえして、わたしのこねこちゃんをかえしてよぉぉぉ!!!





 これ以上は、聞きたくないのに。
 動悸が激しくなる、これ以上言わないで。
 思い出される過去。思い出したくなかった過去。
 そう、私がこだわる理由。思い出したくもないこだわってしまう理由。
 だけど、この男は許さない。とにかく許さない。
 男が望むのは、私の絶望した顔だから。 
 そう、彼が本当に望むのは………。





   「前と同じように、俺が里親探してやろうか?」









 「い、い、いやぁぁぁぁ――――――っ!!!!」
 瞬間、公園の中で大きな悲鳴が響いた。
 公園にいた人達が、全員振り向かんばかりの悲鳴だった。
 金切り声にも近いその声に、男は不意を取られ耳を抑える。
 その時、瑠姫は猫を抱えたまま男の腕を振り払いその場から走り去る。
 夢中になっていたのか、男の声も聞かぬまま。ただがむしゃらに。
 公園から抜け出し、歩道を一心不乱に走る瑠姫。
 男はあっけに取られたのか、その場で呆然とするだけだった。






 時刻は夕方、空は曇天に包まれていた。
プロフィール

myuu-0240

Author:myuu-0240
AnAnやQMA等、アーケードゲームに侵食されている

中身の日記です。

基本、色々だべっててまとまりはない←





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(2,20更新)





雑食が酷くなってる今日このごろ。どうしよう(ぁ)




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