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「私の家に、新しい家族が来ました。」4






実際のバイクのサイドケース見たら、見事に小さかった件について。





……創作するには研究がもっと必要みたいです(涙)
と言うかWordでちょっと確認したらスペース入れたら40ページぐらいあったと言う罠。
いや、多分編集とかしたらもっと減るんでしょうが。






続きは追記からどうぞ。
繋がりは、ここから始まる。


「……ふぅ。」
 玄関の車の収納庫に、バイクを押しながら煉斗は呟く。
 ヘルメットを外し、自分のバイクのハンドルにかけるとはぁ、と大きくため息をついた。
 その顔は、何処か疲れているようにも見える。
 あの後、男か女か分からない人物を『アンジェリカ』に届けるまで
 ずーっと延々と向こうのマシンガントーク&質問に付き合わされたのだ。
 店を見るなりあれは何?とか、どうやって姐さんと知り合ったの?とか。
 最初は何となく返して来たが、ツーリング中でテンションがMAXになっていた
 向こうのテンションに思わず着いていってしまい、自分もテンションが上がっていたのだ。
 着いた時にもお互いテンションが高く、勢いでメルアド交換もした後
 大きく手を振りながらがんばれよー!!と叫んでいた記憶がある。
 人から見たらアメリカンテイスト。多分そう思っているのは自分だけかもしれないが。
 その後彼と別れ、帰る頃には何故か疲れがどっと迫ってきた。
 それだけテンションが高かった反動だろう、そして今に至ると言うわけだ。
 「悪い人ではなさそうなんだけどなー。話してて楽しかったし。」
 自分と波長があうのかもしれない、そんな都合のいい事を考えてみる。
 話した内容に思い出し笑いを堪えず、思わず噴出しそうにもなった。
 「でも、慎にーちゃんの名前出した時すっごい嬉しそうだったんだよな。」
 サイドボックスから荷物を出しながら、煉斗は呟く。
 そう、それは『アンジェリカ』にもうすぐ着くだろうと言う時……。



 「そういや俺ね、製菓学校行ってたの。
  だからお菓子の調理師免許持ってるんだー、すごいでしょ!!」
 「そうなんだ、じゃあ俺のにーちゃんと同じだね。」
 「ん?君おにーちゃんいるの?」
 「ホームステイ先の人が年上だから、にーちゃんって呼んでるだけ。
  確か、慎にーちゃんが働くために取ったって言ってたっけな……。」
 


 「え?まこちゃんの知り合いなの?!
  うわーっ、俺そいつ知ってるよ!だって同級生だもん!!」
 「そうなの?何人かは友達いたって言ってたけど、もしかしたらあんたがそうなのかな。」
 「え、まこちゃんったら俺の事話してないのかなぁ。薄情にも程があるよー。
  最近メールもしてないし、まぁ俺も仕事忙しかったってのもあるけどね。」
 「話してたかもしんないけど、俺は覚えてないだけかも。
  でも、今は一緒に住んでるぜ。ご飯も作ってくれるし困った時は助けてくれるし(意地悪だけど)」
 「おー、話を聞く限りまこちゃん元気みたいだね。ちょっとほっとしたかも。
  まこちゃんにも会いたいなー、会って久しぶりにカラオケとかはっちゃけたーい。」
 「ははっ、いつか叶うといいな。」 
 「本当だねー。あ、カラオケで思い出した。
  俺カラオケ大好きでさ、アニソンとか色々歌うんだけど君は何が好きなのかな?」
 「えーっと俺は……。」






 
 会話の内容を思い出しつつ、荷物を片手に煉斗は玄関のドアへと向かう。
 「(よく考えたら、今日姐さんに話しあるとか言ってたから
   下手したら俺らと関係あるかもしれないんだよなぁ。どうかは分からないけど。)」
 それはそれで、教えてくれるだろう。なんて考えながらも煉斗はドアをあける。
 もちろん、ただいま。と言う言葉も忘れずにだ。
 どうせリビングのドアを開けるまで聞こえないかもしれない、だけど何故か言ってしまうのだ。
 荷物を持ったまま、リビングに向かい扉を開ける。
 そこには、子猫と一緒にテレビを観て昼ごはんを食べている慎の姿があった。
 「あ、おかえり。煉斗。」
 子猫は、慎に懐いたらしく気持ちよさそうに膝の上でごろごろしている。
 時折、慎の食べているサンドイッチを狙おうとするもその度に慎はだめだ。と言うように軽く手で遮った。
 ぺちぺちと、切り揃えられた爪で軽く引っかくも慎が動じる気配は全くない。
 何度もにー、にー、と鳴いているかそこは我慢しろ。と言わんばかりにスルーしている。
 「ただいまー。……心配しなくても、全然元気そうだね。その子。」
 荷物をテーブルの上に置き、リュックは通路の邪魔にならない所の床に置きながら煉斗は言う。
 そして、ラップを貼ってある自分の分のサンドイッチと飲み物を手に取りながら、ソファーの方へと向かった。
 また新しい料理がテーブルの上に来たのを見て、子猫は煉斗の方に飛び移ろうとするも
 慎は子猫の腰辺りを優しく抱き、皿に飛びつかないようにさせる。
 「うん、獣医さんも心配はいらないって言ってたよ。
  ただ、子猫だからいつ病気に発症するか分からないから食べ物とかには気をつけなさい。だってさ。」
 そう言い、慎は小さいテーブルに置いていた診断書を煉斗に渡す。
 食べ物に気を付けるなら、そこに乗せて食わなきゃいいのに。と思いながら。
 一通り目を通した後、分かったと言うように煉斗は頷いて再び診断書を返す。
 そしてそのままソファーへと座り、ラップを剥がして早速サンドイッチを口に含んだ。
 無論、いただきます。の言葉も忘れずに、だ。
 「殆どメールの通りだな。これで里親が見つかっても病気だからって返される心配もないってわけか。」
 「そうだね。と言うよりも……。」
 言葉を詰まらせた慎に、煉斗は不思議そうに見つめながらもどうした?と尋ねる。
 その問いには何でもないよ。と軽く返しながらも慎は話題を変えた。
 「そういや、煉斗遅かったね。一緒にご飯食べようと待ってたのになかなか帰って来なかったから
  食べ始めちゃったじゃないか、どうかしたの?」
 慎の問いに、あぁ。と軽く返事をしながらも煉斗は答える。
 「ごめんごめん、姐さんから連絡はいっちゃってさ。
  買い物から帰ろうとしたら、ちょっと会う予定の人が道に迷ったみたいだから、
  ここまで連れて来いって言われてさ。送ってきた。」
 「あら、そうなんだ。姐さんも唐突だねぇ。で、その人は無事に送れたの?」
 「うん、知ってる店だったからな。『アンジェリカ』って確か姐さんの会社が展開している
  レストランのひとつだったし。食べに行った事あるから、場所知ってたのもあるけど。」
 店の名前を聞いた途端、慎は紅茶を口に含みながらも眉間に皺を寄せる。
 「えー……そこなら、僕も知ってたのに……僕だってそんなに極端に方向音痴ってわけじゃないんだから。」
 「方向音痴だろ。未だに近所のデパートで行方不明になりかねないんだし。
  だから俺に任せたんだよ。俺一応二輪取ってから、1年は経ってるしなー。」
 一つ目のサンドイッチを食べ終え、ぐいっと麦茶を飲んで煉斗は言う。
 慎は図星なのか、一瞬気まずそうな表情をしながら煉斗を見る。
 煉斗は、何も悪い事は言ってないと言わんばかりの表情をしながら、二つ目のサンドイッチに手を出し始める。
 膝にいる子猫は、残念でした。と言うようににゃあん。と一度だけ鳴いた。





 「あ、そういや慎にーちゃん。」
 今度は、煉斗の方から話を変える。慎は目線だけ煉斗の方に向ける。
 「今日迎えに行った人さ、慎にーちゃんの知り合いみたいだったよ。
  慎にーちゃんの事、まこちゃんって呼んでたしさ。」
 煉斗の言葉に、今度は眉を少しだけピクッと動かして飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置く。
 どうやら覚えがあるらしい、煉斗はその動作だけで確信を持てた。
 「まこちゃん……あぁ、アイツか。
  ねぇ、そいつ髪の毛ハネてなかった?茶髪のハネっ毛。」
 「うん、俺と会った時は赤渕眼鏡かけてたけどな。」
 弟が縦に首を振った瞬間、慎自身も確信を持ったらしい。
 赤渕眼鏡はともかく…と呟きながらも、納得したように首を何度も縦に振った。
 「あぁ、姐さんと会う予定の人ってアイツだったのか。
  ……あー、成るほどね。はいはい……うん。」
 「え?慎にーちゃん、やっぱ知り合いなの?」
 二つ目のサンドイッチを食べ終え、三つ目に手を出そうと手を伸ばしつつ慎に尋ねる。
 「ん、まぁね。と言っても少しの間だけだけど。
  僕がホストを辞めて、本格的にパティシエの免許を取ろうと思って勉強し始めた頃の知り合いだよ。
  まこちゃん、って呼び名ですぐ分かったよ。アイツすぐにあだ名つけるからなー…。」
 そう呟くように言いながらも、慎は最後のサンドイッチを手に取り口に含む。
 その表情は、懐かしみながらも何処か苦笑も混じっていた。
 「何、もしかして苦手な奴だったりするの?
  あいつは慎にーちゃんにすごく会いたがってたみたいだけど。」
 煉斗の問いに、慎はそうじゃない。と言うようにゆっくりと首を横に振った。
 「いい奴なんだよ?だけど機嫌いい時は、可笑しいってくらいテンションがあがりっぱなしだからさ。
  からかうにもからかえない。ある意味僕の性格が通じない知り合いの一人と言うか……。
  冬摩とかはドがつく程生真面目だから、意地悪しても面白い反応は見れるんだけど。」
 最後の一口を飲み込み、再び紅茶に口をつけて潤してから慎は話す。
 家の中でも、生粋のドSな悪戯好きの男でも通じない性格はあるとは思っていたが
 まさか、知り合いでいたとは。煉斗は不思議そうに慎を見つめながらもその相手の姿を思い出した。
 「あー……あの人の場合、ドSな慎にーちゃんの言葉も普通にスルーしそうだもんな。」
 先程までのテンションを思い出し、煉斗は一人納得したように頷く。
 でしょ?と言わんばかりの顔を煉斗に見せつつも、慎は続けた。
 「スルーって言うより通じない。逆に倍返しされるかも。まぁ気は合ったから話してて楽しかったけどね。
  煉斗も、普通に話してたら楽しいとは感じると思うよ。人懐っこいところはあるから。」
 「それは言えてる。送ってる間ずーっと喋ってたもん。」
 「そうそう、それで話終えた後は、お互いテンションあがってたせいで一気に体力が削られる。」
 「全くもってその通りですな。」
 あはは、とお互い話題になっている相手の事で軽く笑った後、
 ふとテーブルを見るとカタカタと皿が揺れている。
 何事かと思いきや、暇で耐え切れなくなった子猫がついに慎の皿へと手を伸ばしてしまったのだ。
 しかし、残っているのは紅茶用に使ったレモンの輪切りみ。しかも、少しだけ口に含んでしまったらしい。
 少しだけ感じるその苦さに、子猫は若干眉間に皺を寄せていた。
 「…念のため聞いとくけど、ドレッシングとかは……。」
 「大丈夫、つけてない。と言うかレモンかんじゃうとは不覚だったね。」
 自業自得、と言わんばかりにまだちょっと苦い顔をしている子猫を抱き上げて慎は答えた。
 




 そして時は過ぎ、時刻は昼の3時頃。
 ティータイムの準備が終わり、瑠姫と冬摩が仕事から上がった時だった。
 瑠姫は、少し機嫌が悪かった。
 客の前では見せなかったが、ロッカーに向かう途中ずっと顔はしかめたまま。
 無論着替えている間も、だ。途中夫から来たメールを見てる時もだ。
 それだけ機嫌が悪い、と言う事にもなる。客商売故、それを見せるのはタブーと分かっている為
 仕事中には、決して見せずに堪えてはいたのだが。
 着替え終え、鞄を肩にかけ控え室から出ると扉の傍で冬摩が腕を組んで壁に寄りかかっていた。
 「……いたんですか。」
 吐き捨て気味に言う瑠姫に、若干眉をぴくっと動かしながら冬摩は答えた。
 「まぁな、愚痴ぐらいは聞こう。どうせ上がりは一緒だし。」
 送り迎えもないから、仕方なく。と付け足しつつ、冬摩は壁から背を離す。
 「……くだらない事ですが、それでもいいなら。」
 若干喧嘩口調になりながらも、瑠姫は小さく頷いて冬摩に近づく。
 機嫌が悪くなっても、大抵の場合は押さえ込むのが瑠姫の性格なのだが
 顔に出てると言う事は、相当腹が立っているのだろう。
 答えようによっては、いつものように口論になるだろうな。そんな事を考えながらも。
 「いいだろう、くだらん愚痴でも聞いてやる。
  そんな不機嫌な顔周りに振りまかれたら、困るからな。」
 仕方なくだ。と言わんばかりの声で冬摩は瑠姫に背を向け、歩き始める。
 「む、それだったら遠慮なく聞かせてあげます。耳が嫌ってなるくらいに。」
 対抗するかのように言った後、瑠姫はその後ろをゆっくりと付いていくだけだった。 
 たまに、休憩上がりのバイトがいつもと違う瑠姫を見て、少し怯えていたのは秘密の話である。




 
 帰り道、商店街の中を瑠姫と冬摩は歩いていく。
 冬摩は、若干荒れ気味になっている瑠姫の話を聞きながら頭の中で要点をまとめていく。
 瑠姫の話を要約すると、ようするに来た客の一人がペットの話をしていて
 ペット如きが、ご主人様に生意気にも逆らおうなんて十年早い。
 ペットも女も、素直にご主人様に従っておけばいい。と言う話になっていたとの事だった。
 瑠姫の夫の人柄や性格を考えると、瑠姫は確実に俺様がタイプではない事が分かる。
 しかも、俺様と言っても話を聞く限り幼稚な俺様タイプ。冬摩自身も嫌なタイプである。
 女が、と言う部分にも癇に障ったが、何よりもペット如き、と言うのに怒りを感じたらしい。
 ……今、慎達と留守番をしているであろう子猫の事があると尚更だろう。
 それが分かっているからこそ、冬摩は反論せず瑠姫の愚痴を聞いていた。
 滅多に出さない愚痴だから、尚更。
 「確かに、ペットに腹が立つ事も人間ですからあるかもしれません。
  だからって、あんな風に言う事ないと思います……。」
 ふざけてる、と言わんばかりに愚痴る瑠姫に、暫く黙って聞いていた冬摩が口を開く。
 「……ま、お前がそれですごく腹を立ててるのは見てからに分かる。
  だが、それを人に当てる事だけはするなよ。同類になる。」
 「分かってますよ。私そこまで子どもではありませんからっ。」
 これでも成長したんですっ、とまるで胸を張るような発言に冬摩は疑惑の目を向ける。
 その行為自体が、十分子どもだろ。と言いたくなったが、
 町のど真ん中で口論になりそうなので止める事にした。
 この前それをして町中の注目の的になった挙句、途中で聖に見つかりしこたま叱られたのだ。
 もう大人なんだから、口論とかは外ではなく家でしろ。と。
 冬摩と瑠姫、この二人は仲は良いのだが意見のすれ違いからよく口論になる。
 大抵、瑠姫が冬摩の発言に食って掛かる。と言う意味でだが。
 そして大抵が周りから見たらくだらない事。
 止める相手は大分少なくはなったが、冬摩も大分扱いになれたらしく口論は控えるようにはしている。
 今も、少し間違えれば口論になりかねないのだが。だからこそ言葉選びが重要になるのだ。
 「その点、お前は恵まれてるだろ。誰一人としてうちの家族はそう言う奴はいない。
  もしそんな奴が一人でもいたら、子猫を預かる事に反対していたはずだ。」
 「……そうですね。その場合は、私も負けませんが。」
 「臨戦態勢を取るのもいいが、出来るだけ控えておけよ。……俺様は反撃が怖いとよく聞くぞ。」
 あくまで俺の一説だが、と冬摩はずれた眼鏡を直しながら言う。
 心の中では納得はしているらしい、瑠姫は一瞬う、となるも分かったと言うように小さく頷いた。
 そして、愚痴を言った結果少しだけスッキリしたらしい。何処かその表情は和らいでいるようにも見える。
 「すみません、ちょっと愚痴ってしまって。」
 今度は少し申し訳なさそうに謝りながらも、瑠姫は言う。
 「気にするな。お前が機嫌悪いと慎とかが五月蝿いだけだ。大して意味はない。」
 ぶっきらぼうに言う冬摩の言葉に、分かってると言うように瑠姫は一度だけ首を縦に振る。
 冬摩なりの優しさが分かっているからこそ、余計な言葉なしに首を振るだけでも伝わるのだ。
 「わかってますよーだ。冬摩さんはツンデレさんだから素直になれないって事も。」
 「言ってろ。俺はどう言われようが本心を伝えているだけだ。」
 瑠姫のからかうような言葉も、スルーするかのように冬摩は返す。
 いつものそっけない返事、だけど無理に何か言われるよりかはほっとする。
 冬摩とはよくぶつかるが、それだけ愚痴も話しやすい。恋愛対象には絶対になる事はないが。
 そう思いながら歩く瑠姫の足取りは、先程と比べると軽くなっている。
 その様子は、先程愚痴を呟いていたとは思えないほどだ。
 「さぁてと、明日は子猫ちゃんといっぱい遊べますねっ!
  今日は慎さんや煉斗君に任せっきりだったから、その分たっぷりと可愛がってあげるのです!」
 楽しみだなぁ。と鼻歌交じりに言う瑠姫に、冬摩は釘を指すかのようにはっきりと言う。
 「遊べるのはいいが、里親探しも忘れるな。
  あくまで、認めてもらったのは里親探す前提だと言う事を……。」
 「分かってますって。そう言いつつ冬摩さんだって早く仕事終わらないかそわそわしてた癖に。」
 「確かにそうだが、お前の場合だとすぐに忘れそうだからな。」
 瑠姫の言葉に冬摩はフン、と鼻を鳴らして言う。
 内心、自分も早く子猫に会いたくて堪らない。だがそこはあえて見せないようにはしていた。
 バレているのは承知だが、それだと前に進めないような気がしたから。
 「忘れてませんって!今回の事はきっちりメモにも書いてるんですよ!!」
 流石にそこまで言われたら、ムッとしたらしい。
 瑠姫は鞄の横ポケットから小さなメモを取り出して冬摩に見せる。
 そこには、大きく『子猫ちゃんには飼い主さんをきっちり見つける!』と書いてあった。
 ……こっそり、『もし説得出来たら、うちで飼いたいなー。』と小さく書いていたりもするが。
 そんなメモの文面に、冬摩はわざとらしくため息をついた。
 「はいはい、分かってるようで何より。」
 「むぅ、その反応適当っぽくて何だかヤです。」
 せっかく見せてあげたのに!と言わんばかりの瑠姫の表情に、冬摩は眼鏡を片手で直しながらも言う。
 「あくまで確認のために見ただけだ。
  俺に過大な反応を求めても無理だってのは分かってるはずだろう。」
 「確かにそうですけど、その反応は女の子の気持ち分かってないです。」
 「残念、それは女の子の気持ちとはイコールにはならん。」
 反論する瑠姫に、あえて冷静に返す冬摩。
 的確な発言に瑠姫は返す言葉が見つからず、そっとメモを鞄の中に戻す。
 「と、とにかく…見つかるまでは可愛がるって決めたんですから。それは許してくださいよ?」
 「それくらいは、な。絶対に保健所とか嫌だって言うならその誠意を見せてみろ。
  あんだけ反論したんだから、それくらいの誠意は持ってると俺は考えているが。」
 どうなんだ、そう付け足して尋ねる冬摩に瑠姫は両握り拳を作りながら言った。
 「当たり前です、今回の私は本気なんで……。」
 



 す。と続くはずの言葉。
 その言葉は、一瞬して消えた。
 瑠姫の背中が、影に包まれる。
 話に夢中になっていたせいか、その影に冬摩も気づく事は出来なかった。
 その瞬間、時がゆっくり流れていくような感じがした。
 あっと言う間の出来事、ぽかんとするしかない冬摩。
 影に包まれる瑠姫、その後に包まれる人の肌。
 そして重み、肩にずっしりとした重みを感じる。
 優しい物ではなく、反動を感じるような重さ。
 音で例えるなら、がばっ。そんな感じの音。
 近くで、別に何かが落ちた音がした。結構大きな音だ。
 だが、落とした本人はそれをお構いなしで、大きな声でこう言った。





   「る~き~っ!!!!」






 そしてゆっくりとした時は終わる。
 瑠姫の背中にぎゅっと抱き付く人物、落としたのはキャリーバッグ。
 落とした本人は、嬉しそうに微笑みながら瑠姫を更に強く抱きしめる。
 あまりにも突然の出来事で、普段の瑠姫なら投げ飛ばされても可笑しくない状況だ。
 だが、なぜか瑠姫は投げ飛ばす事もせず目を見開いて驚いている。
 冬摩も、あまりの出来事に瑠姫以上に目を見開いている。
 そんな二人を尻目に、抱きついた人物はそのまま話し始める。
 「あはは、驚いた?
  いやー、瑠姫ってばずっと男の子としゃべってるから絶対に気づかないかなーって思ってさ。
  久しぶりに会うから、ちょーっと驚かせようと思って!
  でも、反応薄かったから俺ちょっとつまんなかったかなー。もうちょっとひゃっとなるかと思ってたけど。」
 瑠姫の名前を語る人物、その勢いはまさにマシンガントーク。
 はっと先に我に返ったのは冬摩だった。そして勢いよく瑠姫から抱き着いている相手を剥がす。
 意外にも、すんなりと離れた相手。そして冬摩は若干怒り気味で尋ねた。
 「……おい、知り合いか何かは知らんがいきなり抱きつくとか。非常識にも程があるだろ。」
 冬摩の低い声には怯む事なく、相手はそのままのテンションで続けた。
 「あ、ごっめーん。いつもこんな感じで瑠姫とはじゃれてたから。つい、ね。
  と言っても、昔の話だけど。瑠姫、嫌だった?」
 ん?と小首を傾げながら尋ねる相手。一体なんなんだと意味も分からぬまま
 冬摩も、瑠姫の方を見る。当の本人はやっと我に返ったらしく
 抱きついた相手を見て、ちょっと困ったような表情をしながら言った。
 「……正直、久しぶりだったからとてもびっくりしちゃいました。
  冬摩さん、大丈夫です。その人、悪い人じゃないから敵意見せなくてもいいですよ。」
 今度は瑠姫が冷静になって冬摩に言う。いや、冬摩自身も一応冷静ではあったのだが。
 「どういう事だ、説明しろ。瑠姫。」
 相手の肩を持ったまま、投げ捨てられたキャリーバッグを広いつつ冬摩は尋ねる。
 そして瑠姫はあくまで冷静に、そしてはっきりと答えた。
 「その人は、れっきとした私の親戚ですよ。
  以前言いましたよね、私の母には下の兄弟がいるって。私とそんなに年の変わらない下の兄弟が。」
 瑠姫の言葉に、冬摩は何かを思い出そうと頭を捻る。
 そういえば、以前話していた。瑠姫が小さい頃よく遊んでいた親戚がいると。
 しかもその親戚はいつだってテンションが高く、そして瑠姫を驚かせるのが大好きだったとも……。
 まさか、と言わんばかりの表情で瑠姫を見る冬摩。瑠姫は大きく首を縦に振るだけだった。
 そしてそのまま、未だ肩をつかまれたままにまーっと笑っている相手にこう言うのであった。






   「お久しぶりですね、時兎ちゃん。」と。






プロフィール

myuu-0240

Author:myuu-0240
AnAnやQMA等、アーケードゲームに侵食されている

中身の日記です。

基本、色々だべっててまとまりはない←





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雑食が酷くなってる今日このごろ。どうしよう(ぁ)




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