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「私の家に、新しい家族が来ました。」2





前半、と言いつつ気が付いたらこの日に。どうしてこうなった←
さて、ギャグは何処にいれようか(笑)






追記からどうぞ。






 ガリっと噛んだ瞬間、ふと我に返る。
 ああ、すっかり忘れていたがまずひとつ乗り越えなければいけない事があった。
 冬摩はそれを思い出すや否や、大きくため息をついた。
 オーナーもそうだが、まだ帰ってきていないある人物の存在が頭に過ぎる。
 今は幾分とマシにはなったが、昔は奴のおかげでどれだけ胃を痛めた事か。
 「(……そういや、俺らだけで相談していたから気づかなかったが
   あいつも知らないんだよな。猫の事。)」
 彼にも、瑠姫は「明日、猫のぬいぐるみが届くんですよ!」と主張していたから
 今日届く事は知っている。だが本物なんて知るはずがない。
 現在時刻は夜7時、そろそろ今日の仕事を終えて帰ってくる頃。
 我が家では、晩飯担当である故に滅多に遅れて帰ってくる事はない。何故かその辺りはきっちりしている。
 妹は猫と風呂、弟は上で呑気にゲームをしていたはず。
 自分自身もさっき気づいたのだ、降りてこない辺り気づいているはずがない。
 と、言うか自分もそうだ。なんでこんな真冬に氷噛んでるんだよ。意味わからん。
 酒飲んでるわけでもないのに氷入れてお茶飲むって、どれだけ猫の事を考えていたんんだ自分は。
 冬摩は軽く自暴自棄になりながらもああもう、と乱雑に片手で頭を軽く掻き毟る。
 「んー、兄ちゃん。何ヒスってんの?」
 そんな事してたら、呑気にPSP片手に降りてくる煉斗の姿。
 『うん、いい調子だね!』とか聞こえる辺り、某歌姫のゲームとかやってたのだろう。しかも階段下りながら。
 消失EXグレート取れねーや、なんて呟きながらも冬摩を通り過ぎてそのまま冷蔵庫に向かう煉斗。
 ペットボトルの炭酸を片手に、冬摩と向かい合わせになるように座る。
 ヒスってなんかねーよと思いっきり突っ込みたくなったが、とりあえずまずは伝える事があるはずだ。
 「煉斗、アイツから今日は帰らないとかメールあったか?」
 「アイツって?」
 「ほら、姐さんらの他に伝えなきゃいけない奴がいるだろ。」
 「他にって、今日中に伝えるべき人いた?」
 ぐいっとペットボトルを傾けて、炭酸を飲む干す煉斗。
 分からないのか、と内心思いながらも冬摩はため息をつきながら言った。
 「……いるだろ、いっつもバニラの香り漂わせてるアイツが。」
 「あ……。」
 最初は冬摩の言葉に、首を傾げていた煉斗だったが
 兄の言葉の意味を理解すると、若干苦い顔をする。



 彼らの伝えなければいけない人物、と言うのは長男的立場である義兄の事だ。
 普段は結構ふざけたりドSだったり、悪戯大好きだったりと真面目かどうか考えもつかない癖に
 兄っぷりを発揮したいのかどうか分からないが、何故か厳しい一面もある。
 つい2年前までは、コックの仕事してる癖に髪の毛束ねるのたまに忘れたりとかして
 瑠姫に怒られていた癖に、最近では逆に弟やバイトの子達に注意する立場となっている。 
 (まぁ、カフェレストランの人事担当もある程度務めているから当然と言えば当然だが)
 家の事に関しても、姐さんが五月蝿いからと連絡は必ずしてよね。と
 無断外泊などしようもんならとにかく五月蝿い。
 それ故、以前瑠姫や煉斗が反抗して講義を申し立てたのだが、言い方が悪かったらしく
 後に「かなり凹んでて酒飲んだくれて、正直かなりうっとおしかったから言葉は選べ。」
 と姐さんに注意されたほどだ。
 ……否、厳しいと言うよりかただの兄馬鹿であろう。ここまで言うと。
 そんな彼だから、言わずに隠そうもんならまた凹むに違いない。
 冬摩ならともかく煉斗と瑠姫にはある意味躾もしつつ甘い存在だから。 

 

 「いや、なかったから今日はフツーに帰ってくると思う。
  あー、そうだよ。どう説明しよっか。ねーちゃんも多分忘れてるだろうと思うし。」
 「忘れてるってのもどうかとは思うがな。
  まぁ奴は奴で頭ごなしに反対はしないとは思うが…。」
 パチ、と片手でPSPの電源を落とし、自分の近くにPSPを置いて肘をつく。
 何で氷入りのお茶なんか飲んでるんだろう、と疑問を浮かべつつも。
 「そんな気楽に、『ぬいぐるみかと思いきや本物でしたー♪』なんて伝わる相手じゃないもんな。
  でも、あえて言ってみるってのも手かも。どうかな?」
 「逆に兄貴っぷり全開で怒られるのがオチだろ。」
 提案をきっぱりと断られ、ですよねー。と軽く返しながら煉斗はリビングの扉の方をちらっと見る。
 すると、玄関の方から声がした。妙に聞きなれた男の声が。
 時計の針を見る、気がつけば時計の長針は3を指している。
 「……今日はお早いお帰りだね。」
 「……全くだ。」
 リビングへと近づく足音に、男二人はぼそりと呟くだけだった。





 「たっだいまー。今帰ったよー。」
 リビングの扉が開かれ、ひらひらと手を振りながら入ってくる男。
 煉斗よりかは薄いロングの金髪は、後ろで止められたままだ。
 片手には買い物袋、音を立てて肩を鳴らしながら煉斗と冬摩の方を見る。
 「あー、お帰り。慎にーちゃん。」
 「……お帰り。」
 簡単に返事を返す二人に、若干不満げな顔を浮かべながら男…慎は言う。
 「何だよ、せっかくお兄さんが仕事終わって疲れて帰ってきたって言うのに。
  そんな素っ気無い返事をするように育てた覚えはないんだけど?」
 「素っ気無いって、俺はいつも通りだろうが。
  逆に俺が機嫌よく挨拶なんぞしたら、お前は引くだろうが。」
 「まーね。冬摩はいつもそんな感じだってのは承知してるから。
  あえて言ってみただけなんだけどね。僕は。
  しいて言うなら、煉斗が若干素っ気無かったのが僕は不満なの。」
 おにーさん寂しいよ、なんて付け足す慎に冬摩は呆れながらもため息を付く。
 いつもの弟馬鹿である。以前よりかは慣れたもんだがやはりいつ聞いても呆れる。
 以前は妹に発症していたが、あまりにも弄り過ぎたせいで最近は冷たい反応ばかりなもんだから
 今度は弟(特に煉斗)に発症している。呆れたものだ。 
 当の本人は、スルーしつつも凹まれると面倒だからと軽く流してはいるのだが。
 頭をわしゃわしゃと撫でられながらも、煉斗は慎の方を向きながら言った。
 「俺だってそう言う時もあるっての。
  それよりも、慎にーちゃん早かったね。どうしたんだ?」
 「予定より早めに買い物が終わったからねー。
  今日はいい豚肉があったからしょうが焼きでも作るよ。あとはポテトサラダとかも。」
 そう言って、慎はエコバッグから豚肉を取り出して見せる。
 よく見たら半額のシールがついている。まぁ慎の買い物時間から考えて割引される時間だろう。
 「あ、じゃあ冷蔵庫にパプリカあっただろ。あれも使えないか?」
 「そうだね、今日はアレンジしてサラダにでも入れてみようか。
  しょうが焼きは、市販のタレじゃ面白くないからオリジナルにアレンジして……。」
 先ほどの相談ごとは何処にいったのやら、すっかり晩御飯談義になってしまった二人。
 このまま続いてくれたら、と一瞬思ったがそうは行かないだろう。
 晩御飯の時に言えばいいかもしれないが、あまりグダグダ伸ばすのもスッキリしない。
 とりあえず、まずは猫の話をさっさと済ませるしかない。
 悩みに悩んだものの、瑠姫と約束したのだ。説得すると。
 仕方ないな、と頭を軽く掻きながらも冬摩は口を開いた。
 「慎、話がある。」
 「ん?」
 冬摩の言葉に、先ほどまで煉斗と話していてた慎がこちらを向く。
 同じく煉斗も、我に返ったかのようにあ、と小さく声をあげた。
 その反応を見る限り、やはり夢中になっていたらしい。煉斗の悪い癖でもあるがそんな事はどうでもいい。
 「実は、猫のぬいぐるみの件なんだが……。」
 「ああ、そういや今日来るとか言ってたね。
  どんな感じなの?瑠姫が気に入るデザインならいいんだけど。」
 僕もちょっと気になってたんだよね。と付け足して冬摩の方を見る。
 「どこにあるの?僕にも見せてよ。
  まだ届いてないなら、それでいいけどさ。」
 さて、いざ言おうと思ったがどう切り出すか。
 煉斗は煉斗で、何かしら言おうとするも自爆するに決まってるだろうから期待はしていない。
 その前に、自分がきっぱりと言うべきだろう。そう決意して冬摩を口を開いた。
 何かしらの弄りの覚悟は、出来ている。いつもの事だから。
 「その、猫のぬいぐるみは……。」





  「あれ?慎さん帰ってきてたんですか?」





 本題に入ろうとした途端、開かれる扉。
 決意を壊されるかのように、放たれる言葉。
 呑気に子猫片手に、タオルを首にかけて出てくる妹。
 湿った髪の毛を見る限り、あの後一緒に風呂でも入ったに違いない。
 一瞬にして、その場にいた全員が瑠姫の方を見る。
 煉斗は、口を半開きにして来ちゃったよ。なんて表情を浮かべている。
 冬摩は、何でこんなタイミングで来るんだと言わんばかりに冷や汗を掻いている。
 その瞬間、瑠姫はすぐに我に返った。
 相談はしていたが、慎は子猫の事を知らない。と言うか、慎はぬいぐるみが来ると思っていた。
 だが、自分が抱えているのは正真正銘本物の子猫。息もしているし動いている。
 「あ、え、えっと……。」
 わたわたとする瑠姫に、慎は何かしら冷静に言葉を放った。
 「……すごいね、アンサー協会はリアルに動く猫の人形でも作るんだ。」
 口では冗談を放っているが、素でボケているはずがない。声色から普通に気づいている。
 「え、えへへ…そうみたいですね。私も見た瞬間驚いたんですよねー。
  まさか、こんなにリアルに動くなんて思わなかったので。夢なのかなー、なんて思いまして…。」
 あはは、と軽く笑いながら返す瑠姫。ボケてくれたら許してくれるなんて思ったのだろうか。そうは思ってないとは思うが。
 子猫に関しては、そんな状況にも関わらず呑気に欠伸なんてして瑠姫の腕の中で居心地よさそうにしている。
 「だよねー、たかが猫のぬいぐるみでもそんな風に欠伸なんて3D映像でぐらいしか
  しないもんね。もしくは近代技術発達したロボットぐらいしか出来ないっての。
  そんな技術あったら僕でも見てみたいなー。……君達もそう思うでしょ?冬摩。煉斗。」
 そう言う慎は笑顔を浮かべているが、目は笑ってない。
 冬摩と煉斗を見る目は、どこか厳しい。煉斗の笑顔が一瞬にして引きつる。
 若干涙目になりながら、煉斗は冬摩に助けを求めている。情けないものだ。
 「……説明、出来るね?冬摩。」
 優しいが、威圧のあるその言葉に冬摩は小さく縦に首を振った。
 馬鹿野郎が、そんな言葉を瑠姫に対して思いながらも。
 時計の短針の針が6を指す。……本日の晩御飯の時間は延びそうである。






 「……成る程ね。そう言う事。」
 ストレートの紅茶を片手に、冬摩の話を聞く慎。
 男3人、女1人がリビングのテーブルにて向かい合わせになって話している。
 テーブルには各自の飲み物、昼に送られてきたダンボールと手紙がおいてある。
 慎は、冬摩の話を聞きながらもまじまじと手紙を見つめていた。
 「文面からするに、手書きじゃなくてワープロ打ちな所から
  子猫が当たった人全員に送ってるね、これは。
  って事は、確実にわざとじゃないのは分かる。だとしたら猫のぬいぐるみは何処にいったんだろうね。」
 「多分、入れる際に協会員がぼーっとしてた…と俺は思うんだけど。」
 先ほど取り出し、まだ少し残っている炭酸を飲みながら煉斗は言う。
 「だとしても、入れる際に心音とかあるから普通は気づくよね。
  それでも気づかなかったら、アンサー協会は相当ブラック企業で
  仕込み担当の協会員がミスした、と見てるけど。」
 「ブラックか否かってそう言う問題なんでしょうか…?」
 ミルクティーを少しずつ飲みながら、瑠姫は言う。
 「あくまで僕の意見だけどね。そこは簡単にスルーして頂戴。
  それが本当かどうかは僕にも分かんないよ?
  だとしても、ドッキリとしてもやりすぎな予感もするけどね。」
 コト、と静かに紅茶の入っているティーカップを置き、慎はそっと指先で子猫を撫でる。
 子猫は、テーブルの上でごろんとしながらも慎の指先の撫でる行動に気持ちよさそうに喉を鳴らしている。
 「で、本題に戻るけどさ。瑠姫はこの子を飼いたいって?」
 「俺も最初はどうなの、とは言ったんだけど、なんだかねーちゃんが頑なになっちゃってさ。
  未だにその決意は消えてないんだろ?」
 「あくまでも里親を探す前提ですよ。それまでは飼ってもいいでしょう?
  里親が見つかったら、きっちり返しますから。」
 「返すって、言葉が違う。渡す、でしょうが。」
 ぎゅ、と握り拳を作りながらも決意を新たに伝える瑠姫を返し、慎はあくまでも冷静に返す。
 言葉の間違いに彼女は一瞬怯みかけるも、それは今はおいときましょうよ。と弱気に言う。
 元語学・文学超人取り故か、彼女の放つ言葉に対してたまに突っ込み癖のある慎。
 現語学・文学超人の冬摩だが、1時代は苦手ジャンルであった事から
 未だにその辺りはフォローは出来ないと言う。
 ……まぁ、それはどうでもいい情報であるのだが。





 そんな瑠姫を見つつ、慎は暫くの間考え込むと瑠姫に尋ねた。
 「……子猫の世話って、そんなに安易なものじゃないよ。分かってるの?」
 「えぇ、それは覚悟の上です。」
 「しかも、多分その子は元野良。念のために明日獣医に行く必要もある。
  他にもトイレの躾、壁のひっかき防止、発情期。問題は色々あるはずだけど。」
 「その場合は、私の給料から支払います。飼い主としての責任はきっちり果たすつもりです。」
 「うちは飲食業勤務、って事を踏まえて、ちゃんとその辺りも守れる?」
 「はい、勤務先には絶対に連れて行きません。約束します。」
 慎の口から出る質問に、瑠姫は何度も頷きながら答えていく。
 ある程度、動物を飼う中で重要とされる部分を。次々と。
 その口から出る答えに迷いはない。目からも真剣な物が伝わってくる。
 嘘を言っているようにも見えない、それは煉斗も冬摩も分かっていた。
 当然、それは慎にも分かっている。彼女がそんな風に放棄するような人間ではない事は。
 でも、念のためだ。多分自分から姐さんに伝えなければいけないだろうから。
 冬摩は何だかんだ言って、口はあまり上手い方ではない。もし反対されたら丸め込まれるのがオチだ。
 慎はそう考えた後、小さくため息をつきながら言った。
 「……そう、それならいいんだけど。」
 そう言って、そっと子猫を抱き上げる。そしてそのまま小さく微笑んだ。
 「いいよ、それなら。でも里親探しはきっちりするんだよ?
  姐さんには僕から伝えておくから。」
 「本当ですか?!」
 慎の言葉に、瑠姫はぱぁぁっと輝くような笑顔を浮かべて喜んでいる。
 冬摩は、慎の言葉にえ、と軽く驚きながらも尋ねた。
 「おい、認めるのはいいとしても姐さんからは俺が……。」
 「馬鹿、口は僕の方が上手いんだから効率よくするにはそっちの方がいいだろ?
  それに、冬摩は丸め込むより猫のお世話をしてる方が向いてると思うけど。
  部屋にあるんだろう?猫の飼育本。」
 馬鹿、と言う言葉にカチンとくるも、慎の言葉に思わずあ、と声が出る。
 一体いつ調べたのかは分からないが、確かに表紙が可愛いからという理由で
 冬摩の部屋の本棚には、猫の飼育本は何冊かある。
 「確かに、ある事はあるが……。」
 「だったら、里親見つけるまでにある程度の躾とかは出来るはず。
  煉斗も、協力するつもりならそこらへんは目を通しときなよ。
  動物は、生半可な気持ちで飼ったら後悔するだけなんだから。
  あと、念のために協会にも連絡しときなよ。あの連中はすぐに保健所…、とかはないと思うし。」
 一瞬、保健所と言う言葉に瑠姫の表情が強張る。
 それを見逃さなかった慎は、きっちりと否定の言葉を投げかける。
 その言葉に、瑠姫の表情はどこか安堵を帯びていた。
 「あ、いや、それはいいんだけど慎にーちゃん。何で慎にーちゃんが仕切って……。」 
 「じゃあ今の発言、撤回してもいいんだけど?」
 尋ねようとする煉斗に、有無を言わさぬように慎は若干威圧をかける。
 その言葉に逆らえず、煉斗は思わず後ろに少し引きつつもはい…と小声で答えた。
 優しいのか優しくないのか分からぬ態度に、瑠姫は一瞬戸惑うも
 里親を見つけるまでの間だが、一緒にいる事の出来る嬉しさに自然と微笑んでいた。
 その笑顔を見ながらも、冬摩は先ほどの強張りが暫く頭から離れる事はなかった……。





 「慎、何で許した?」
 話し合いが終わり、遅めの夕食の準備中。
 夕食遅れた責任取れ、と言われポテトサラダの準備を進めながら
 冬摩は、隣でメインの準備をしている慎に尋ねた。
 「んー、まぁあんだけ覚悟決めてるなら止めるまでもないかなーって。
  姐さんの事だ。どうせ店に連れてこないならいいとかで許しそうな予感もしたしね。」
 慎は、豚の下処理をしながらも飄々とした感じで言った。
 「冬摩は真面目に考えすぎ。ぱぱさんはともかく姐さんが頑なに反対した事ってないでしょ。
  もう何年もの付き合いなんだから、そこらへんは分かってたと思ってたんだけどな。」
 「念のため、だ。今回は動物を飼うんだから命に関わる事だぞ。
  ……それに、どうも俺は納得いかん事がある。」
 ぐ、とジャガイモを潰す手が強くなる。茹でたてで柔らかい故すぐに潰れるジャガイモが更に潰れていく。
 自然と怒りがこもったのであろう、我に返りそっとポテトマッシャーを持つ手を緩めた。
 それを横目で見ながらも、慎はさりげなく尋ねた。
 「……瑠姫が、あれだけあの子に固執する理由?」
 図星らしい、ある程度潰し終えたジャガイモのボウルを横に置きながらも冬摩は頷いた。
 「それだけあの子が気に入った、と僕は考えてるけどね。
  あとは……、保健所。と言う結末がどうしても嫌だからじゃないの?」
 「だとしても、アイツはやたらと保健所。と言う言葉に敏感になっている。
  いくらなんでも反応しすぎだ。どうしてあれだけ敏感になる必要がある?」
 冬摩の疑問に、一瞬考え込む慎。その間にも、手を動かす事は止めない。
 暫し黙って考えていたが、慎は多分だけど、と言う言葉を付け足して冬摩に伝える。
 「……”アイツ”関連、とか。」
 慎の言葉に、冬摩は野菜を切る手を止める。
 包丁を落としそうになるが、何とか落とさぬように包丁を持ち直した。
 脳裏によぎる”アイツ”の顔。その瞬間、頭を抱え込んだ。
 瑠姫の因縁の相手であり、自分達にとっても苛立ちの隠せない”アイツ”の存在を思い出して。
 いつだって、瑠姫や瑠姫の母親を狙う”アイツ”の存在を……。
 「……ったく、瑠姫はどれだけアイツに……いくらなんでも異常すぎる。」
 「あくまで予想、だけどね。そうじゃない事を祈るよ。僕は。
  とりあえず、僕らが出来るのは子猫のお世話ぐらいだよ。その事はまたあとで考えよう。
  ……今、”アイツ”の事を考えてもキリがない。そうでしょ?」
 フライパンに、豚を一枚一枚丁寧に乗せながらも慎は言う。
 「……そうだな、今は考えるのはよそう。」
 小声で返事をしつつも、冬摩は再びサラダを作る作業に戻る。
 ボウルに切った野菜を入れようとした瞬間、慎に思いっきり手首を掴まれる。
 今度は何だ、と言わんばかりに横目で慎を見ると、慎の目は若干きつくなっている。
 「……冬摩、僕ポテトサラダにきゅうり入れられるの嫌いなんだけど。」
 「…………。」
 別にして。と言わんばかりの表情に、冬摩は呆れてしまい自然と大きくため息をついていた。
 真剣な顔をしていると思ったらそれかよ。そう呟いてしまいたくなるほどに。








 同時刻、ある駅。
 帰宅ラッシュ故か、着いた途端一気に電車から人がぞろぞろと降りていく。
 その人ごみの中に、小さめのキャリーケースを片手に、もう片方の手には地図を片手に降りる人物が一人。
 毛糸帽から見える肩より少し短めのハネっ毛と、赤いふちの眼鏡。少しもこっとしたコートを着る
 その姿は、人から見たら何処か可笑しくも見える。
 そんな目を気にせず、電子チャージのカードを改札に当て、改札を通ると大きな駅前広場へと出る。
 地図を確認しつつ、今日泊まるらしいホテルの場所を確認しうん、と大きく頷いた。
 そして地図を直し、コートのポケットからスマートフォンを取り出してメールを打ち始める。
 一瞬ずれた眼鏡を直しながらも、メールを打ち終えるとよし。と呟いて送信ボタンを押す。
 メールの内容は、こうだった。





 Time:2012/ 2/28 20:30
 From:tokky-tyan@XXXX....
 Sub:詩織さんへ。

 やっと着きました。
 とりあえず、近くのホテルで今晩は泊まりますので
 詳しいお話に関してはまた明日、12時にイタリアンレストラン『アンジェリカ』でお願いします。
 俺のために、海外遠征途中で切り上げさせて申し訳ない代わりに、
 お土産たくさん持ってきましたので、楽しみにしてくださいね。


 あと、瑠姫に関して大事なお話もあるので
 アイツが来る前に、瑠姫に会う事を許可してください。
 もしかしたら、また瑠姫が暴れるかもしれません。
 確か旦那さんは出張中、せめて彼が帰ってくるまでにアイツと会わせないようにしたいので。





 「……待っててね。瑠姫。」
 そう呟いて、照明の光に照らされながらもその人は歩き始めていた。
プロフィール

myuu-0240

Author:myuu-0240
AnAnやQMA等、アーケードゲームに侵食されている

中身の日記です。

基本、色々だべっててまとまりはない←





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カードデータ等はデータ参照で

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(2,20更新)





雑食が酷くなってる今日このごろ。どうしよう(ぁ)




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